関西の都市画スケッチを考える(3) 伊藤正敏著「無縁所の中世」

前の記事で述べたように、中世の宗教と経済活動を知る必要性を感じ、
関連する書籍を調べました。

すると、伊東正敏著「無縁所の中世」(2010年 ちくま新書)という本に
行き当たりました。(本当は、この著者の前著、「寺社勢力の中世-有
縁・無縁・移民」の方がよい可能性があるのですが、まだ手に入れてい
ません)

それでも、本書には私が習った教科書からは予想もしなかった驚くべき
内容が書かれています。こまごまと説明するのは面倒なので、ポイント
の部分を抜粋します。

中世の500年は、無縁所の時代として考えると非常にわかりやすい。そ
れは、鎌倉・室町幕府よりずっと長く続いた。中世の無縁所は、踏み込む
ことが何となく憚られる心理的なタブーの地というレベルにとどまらない。
実力による外部権力の侵入阻止を辞さない地であり不入を自力で守る大
勢力だった。


考えても見よう。大和50万石、紀伊50万石は巨大な実体だ。境内都市は
第二次・第三次産業のほとんどを担う巨人だ。文明・文化はほぼすべて寺
社から生まれた。絶対無縁所は比叡山や興福寺だから、これが実在しない
とか、力不足だということは誰にもできない。「山門磨滅歟、武家滅亡歟」と
幕府を恐怖させる実力者である。公家・武家と拮抗する三大勢力の一つ、
理不尽の訴訟を認めさせ、宣旨や徳政令を書きかえさせ、国政に発言権
を有する無縁所は、権力による承認などはるかに超越した存在であった。


著者は、京都においては、比叡山延暦寺とその末寺、末社として祇園社、
北野社、京極寺をあげ、奈良では興福寺・東大寺を無縁所の寺社勢力
として挙げます。(ここでいう無縁所は、公家政権時代、武家政権の幕府
ともに、行政権、警察権がまったく及ばない治外法権地域であることを示
します。)

そして、所領の大きさ、(石高)だけでも、大大名に匹敵するだけでなく、実
は、特に大事なことは、彼らが商工業の実権を握っていたことです。具体
的には、京都の金融業者、土倉の総数300軒の内240が叡山に属する、
酒屋、米屋、味噌屋の全部、油屋のほとんどが叡山に収益の一部を献上
する状況でした。

一方、奈良では中世は大半が興福寺領、東大寺・興福寺が複合境内都市
を形成し、叡山同様強大な所領を有し、また商業や武器製造についても実
権を握っていました。

石高でみると、それほど高くないように見えますが、新田開発が進んだ江戸
期の各藩と比べてはだめで、実は中世では近畿の米の生産高が全国で占
める割合がきわめて高かったことを著者は指摘しています。
(続く)

<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(大橋医院待合室)
人物スケッチ(大橋医院)493(縮小)

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関西の都市画スケッチを考える(2) 境内都市、寺内町の視点で

一昨年の、奈良・今井町訪問で、寺内町の存在を初めて
知り、同時にこれまで漠然と安土城や京都にとどまってい
るものと思っていた織田信長が、実は畿内統一のために、
活発に移動し、畿内の戦国大名だけでなく寺社勢力との
戦いに奔走していたことがわかり、有名戦国大名同士の闘
いが中心だった若いころの歴史の見方が変わりました。

以降、大阪城の前身の石山本願寺はもとより、大阪に現在
も存在する寺内町、富田(高槻市)、枚方(枚方市)、富田林
(富田林市)を訪問するにつけ、東京では意識にも上らなか
った、畿内の特徴がハッキリ感じられるようになりました。

従来、京都の天皇や貴族、将軍、大名間の権力闘争や戦国
大名同士の闘いなど、政治や戦争を中心に教科書に書かれ、
私もそのように教わってきました。

しかし、畿内を歩く内に、現在の歴史が経済活動や一般民衆
の動きなしには語れないと同じように中世の人々の宗教、経
済活動を知ることなしには当時の社会を理解できないのでは
と考えるようになりました。

これは、都会スケッチをするときに、歴史的背景を考える上で
大事なことです。
(続く)

<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(大橋医院受付スタッフの女性)
人物スケッチ(大橋医院)492(縮小)

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関西の都市画スケッチを考える(1)

昨年末までの記事の中で、関西の都市画スケッチをどのような考えで
描いたらよいか、散発的に書いてきました。

一方、関西の都市を観察するうちに、最近は、東京の街を異邦人の目で
見るようになってしまいました。(見ることができるようになったというのが
正しいかもしれません)

一月おきに行くたびに、以前自分が描いていた東京の都市の姿は以下の
ように感じます。

1)(超)現代都市としての東京:膨大な資本の集積がもたらす都市の顔の
  急激な変貌。しかも絶えず変化し続けている。
  (住んでいるときにはそこまで感じませんでした。最近は東京オリンピッ
  クもあるのかどんどん変わります、目まいがするほどで、関西では味わ
  えません。)
2)江戸時代の都市設計:関東自体は古代からの歴史があるのですか、
  東京は、家康が埋め立てで作った江戸の町の印象が色濃く残っている。
  そして、その街づくり(町割り、道路付け)は現代まで色濃く残っている。
3)そのため、歴史的建造物はほとんど消失しているにも関わらず、歴史的
  背景を感じながら、現代都市のスケッチをすることができる
4)ただ明治以降の近代建築はそこそこ残っているけれども、関西にくらべて
  集積度が高くなく孤立しているため、気軽に出かけられない。

結局、この東京の都市のスケッチの背景を考えることにより、関西の都市が、
文化的には室町時代から、都市(京都、大阪)基盤は、戦国時代の寺内町お
よび秀吉の大改造設計からと、東京との違いが却って感じられるようになり
ました。

以上は都市の景観の歴史的背景の側面ですが、より大事なのは人間の生活、
風俗です。今後その観点でも関西の都市を見ていきたいと思います。
(続く)

<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(大橋医院待合室)
人物スケッチ(大橋医院)491(縮小)

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TAG : 都市スケッチ

関西ぺんすけ会(1月) 新年会スケッチ

1月23日(月)に本年第一回の関西ぺんすけ会を行いました。

1月度は恒例の新年会です。場所は松原市にお住まいのsaku
さんのお宅です。

各自料理やお菓子を持ちより机の上に並べました。食事を始
める前に光景をスケッチするのが習いです。

メンバーの皆さんは、柴犬の綾ちゃんもスケッチされましたが、
私は暇がなく、残念ながら食卓の料理のみです。


<本日の絵>
ViFart F4  関西ぺんすけ会(1月度) 新年会
関西ぺんすけ会(新年会)(線描)(縮小)

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神戸ぶらりスケッチ会(5月) 神戸税関(線描)

およそ半年前のぶらりスケッチ会の線描を完成させました。

対象は神戸税関の建物です。
戦前の建物ですが、縦横の線が多く途中までで永らく放って
いました。

建物の正面を描くのに都合の良いことに、道の真ん中に防壁
付きの立つ場所があったので、そこから描きました。手前の円
は防御壁の一部です。

<本日の絵>
ワットマン F6 神戸税関(線描)
神戸税関(線描)(縮小)

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TAG : 神戸 近代建築

関西ぺんんすけ会(9月度) 天王寺・びっくりドンキー前の通り

関西ぺんすけ会の9月度の線描を完成させました。

天王寺界隈は、聖と俗が入り混じったいかにも大阪らしい街で
す。
関西ぺんすけ会の9月度のスケッチでは、以前気になっていた
びっくりドンキーのお店の壁のユニークさに惹かれていたので
まよわずここを選びました。

特に、奥に見える城郭風の建物は大阪のユニークな建物の本
にも取り上げられていたので、入れてみました。しかし、よくよく
見るとラブホテル街だということに気が付きました。

将来展示すべきかどうか迷いそうです。

<本日の絵>
ウォーターフォード F4 天王寺・びっくりドンキー(線描)
天王寺・びっくりドンキー前の路地(線描)(縮小)

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TAG : 都市スケッチ

関西ぺんすけ会(11月度) 大阪鶴橋保護犬カフェ(線描)

関西ぺんすけ会(11月度)のスケッチをご紹介します。

当日現場でほとんど描いてしまったのですが、少し手直しするか
どうか迷っていました。

かなり早く描いたので、肝心のワンちゃんがラフなスケッチのまま
だったからです。

多くの人が訪問したせいか、ワンちゃん達は興奮して動き回るので
どうしてもラフなスケッチになってしまいます。

けれど、これも当日の雰囲気を其の儘伝えるものとして、手直しは
やめることにしました。

<本日の絵>
ウォーターフォード F4 大阪鶴橋保護犬カフェ(線描)
大阪鶴橋保護犬カフェ(線描)(縮小)

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TAG : 大阪

神戸ぶらりスケッチ会(11月) 太子道風景(線描)

神戸ぶらりスケッチ会(11月度)の線描を完成させました。

再度山荘まで行ってランチをとり、周辺をスケッチするこ
とが当初の予定したが、麓から山荘まで再度川沿いに歩
く太子道が期待以上に素晴らしかったので描くことにしまし
た。

太子道で予想外だたのは、道沿いに点々と昔の建物があ
ることです。

この場所も川を渡って民家(おそらく昭和初期に建てられた
)があり、それを見ながら上を見上げると行く手には錦に飾
られた山々が見えるので、ハイカーの足取りも軽くなります。

庭には、大きく育った芭蕉が植えられており、それがいかに
も時代を勧進させます。

<本日の絵>
ワットマン F6 神戸・太子道風景(線描)
神戸太子道

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TAG : 神戸

四天王寺初訪問(2)

さて、スケッチポイントとしての天王寺です。

伽藍を描く限り、前回の記事の川瀬巴水や織田一磨の版画
織田の版画は示していません。)の構図と似てしまいます。

    天王寺9 天王寺10

回廊の中を覗きこんだり、北側の石舞台の方まで足を延ばし
ましたが、これといったポイントが見つかりません。

        天王寺10

石舞台を過ぎてふと後ろを振り返ると、回廊の北側に並ぶ建
物を通して金堂の屋根や五重塔が見えます。

          天王寺11

よく見ると、五重の塔の背後にうっすらと高層ビルの頭が見え
ました。あべのハルカスです。

これは川瀬巴水や織田一磨の時代にはまったくなかったもの
です。仮に川瀬巴水や織田が現代にいたとしても、高層ビルは
古刹には似合わないと省くかもしれません。

私の場合は積極に取り入れたいほうですので、あべのハルカス
のシルエットが生きる場所を調べてみました。

    天王寺12 天王寺13
いつか描いてみたいと思います。

<本日の絵>
織田一磨 大阪風景 京町堀川(出典:wikimedia commons)
織田一麿 大阪風景
織田の「天王寺東門」を本当は載せたいのですが、フリー画像が見つからないので代わりに
この版画を載せます。

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四天王寺初訪問(1)

川端くみさんの個展訪問の帰りに四天王寺に寄ってきました。

生まれてはじめての訪問です。
大阪をどう描くか、毎回念仏のように唱えていますが、四天王
寺も大阪を理解する鍵となる場所だと思ったからです。

  天王寺2 天王寺3

四天王寺の歴史を考えると、当然大きな観光地になっても不
思議ではないのですが、大阪城の影にかくれているようです。

理由としては、度重なる災害と戦禍で古い建物が残っておらず、
しかも昭和30年代のコンクリートによる復元であることだからと
考えられます。

実は、私も今までその理由からこれまで何度も天王寺による機
会があったのに、訪れるのをためらっていたのです。

ここでは、詳しくは述べませんが、太閤秀吉の街づくりによって、
大阪、上町台地でそれ以前に繰り広げられた人々の営みが、見
えづらくなっています。秀吉以前の大阪の歴史を感じなければと
考えなおし訪れたというわけです。

訪れて感じたのは、その境内の予想外の広さです。さらに南大門
から中門、五重塔、金堂、講堂が一直線に並ぶ伽藍配置と朱色と
青緑が見慣れた寺院とはまったく異なり古代の時空(飛鳥時代?)
を感じさせます。

        天王寺4

(続く)

<本日の絵>
川瀬巴水 天王寺、大阪(出典:wikimedeia commons)
天王寺
川瀬巴水の版画の多くの事例のように雪の中の天王寺です。
描かれているのは、江戸時代再建時の伽藍で、どことなく江
戸の建物の匂いがします。

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