古墳の美と景観美、埴輪の美と現代美(4)

さて、3回にわたって、スケッチの話題から若干それた話をしてきました。

もともと、今城塚古代歴史館で会ったボランティアの女性が、公募中の論
文(エッセイ)に、スケッチと併せて応募したらと薦められたため、はたして、
それに見合うテーマなのかどうか、そのための確認作業のため始めました。

しばらくご辛抱ください。

さて、埴輪ですが、前回の記事で「美学、美術史的な観点からの見方はほ
とんどされていません。」と書きましたが、古くは、和辻哲郎のエッセイや、
最近では、橋本治の「ひらがな日本美術史」などで、埴輪について言及され
ていることは頭に入っていました。

しかし、「論文」というからには、何等か新しい仮説の提示と論証が必要で
しょうし、エッセイとしても、日本の「随筆」ではなく、欧米でいう「エッセイ」で
しょうから、新しい視点の導入と、それに基づく議論の展開が必要です。

そういう意味で、美術史家や美学研究者の説を知りたかったのですが、素
人の常套手段として、日本美術全集や、美学関係の著書を図書館やインタ
ーネットで調べても、美術全集では、考古学者が考古学を語っているだけで
すし、美学者も巧妙に古墳時代は避けているようなのです。(芸大の博士論
文のリストにもありません。)

どうやら、自分で何か新しい視点を見つけなければならないようです。

今のところ、頭に浮かぶのは、世界の古代美術との比較です。
以前、ギリシャ彫刻の変遷を見ていたとき、アルカイックスマイルを持ち、
直立不動のぎこちない初期の彫刻から、たかだか50年か100年ぐらいで激変
し、あの見事な写実力を獲得したことを知った時の驚きが頭に残っています。
(いったい、人間の能力はどうなっているんだと驚きました。)

物事の事象は、連続的、なだらかに変わるものではなさそうです。しかし、一
方、変わった後は数百年、1000年単位で続くケースもある。(ギリシャ・ローマ
彫刻、エジプト美術など思い浮かびます。縄文土器もその一つでしょうか。)

埴輪の場合、考古学者はその造形の裏にある目的、役割にどうしても関心が
行き、造形美を生み出す人間の創造力の源泉の探求にはなかなか行きつか
ないようです。(なぜ、数百年の間、埴輪という造形を継続したのかの探求も)

以上の世界の古代美術との比較や、人間の造形に関する能力の源泉を手掛
かりに、夏の暑い日を過ごすための頭の体操として、しばらく楽しんでみるとし
ます。

<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(阪急神戸線)
人物スケッチ(阪急神戸線)124
電車内での年取った男性は、やはり腕組、睡眠ですね。
スマホを操っている姿は似合いません。

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古墳の美と景観美、埴輪の美と現代美(3)

何気なく埴輪をスケッチしたのですが、今回いくつか疑問点が
わいてきます。

短く言えば、埴輪は、何故に日本全国、数百年にわたり埴輪な
のか、埴輪の造形は何に由来するのか、二つの疑問です。

実は、埴輪の本を読んでも、どの本も、考古学の立場からの説
明ばかりで、美学、美術史的な観点からの見方はほとんどされ
ていません。

私が、今回不思議に思ったのは、古墳に収められた副葬品の
工芸品、馬具、武器や甲冑が、驚くべきほどに精巧、精緻、あ
るものは写実的につくられているので、埴輪のその一見プリミ
ティブな造形が、とても同時代の職人が作ったとは思えないの
です。

しかも、不思議なことに、南は九州から、北は東北まで、膨大な
数の埴輪が、各地の窯で作られているにもかかわらず、埴輪と
しての造形は共通です。(もちろん、微妙な地域差はありますが)

この一様さは、空間だけでなく、100年単位の時間も支配してい
るのです。

例えば、今城塚古墳は、古墳時代の後期の6世紀に作られてい
るのですが、後期では最大級の前方後円墳で、その規模は5世
紀の大型古墳と同じです。そのため、後期の様式ではなく、5世
紀と同じ大きさ、様式で埴輪が作られています。

すなわち、わざわざ、100から150年前の様式に合わせているの
です。一方、今城塚古墳の埴輪を創った窯では、6世紀の小型
古墳向けの埴輪も作っていることが確認されています。

意図的に、維持管理を図ったとしか思えません。

このことは、現代の企業の工場(工房)と職人の人たちを思い起
こせば、不思議な状況といえます。

埴輪の窯(工場、工房)は、数百年にわたり、同じデザインで作り
続けたわけですが、現代の企業の寿命を考えると、300年から400
年間、同じ製品を作り続けることは考えられません。

また、作る人も、どうしてもデザインを改良したり特徴を出したい
気持ちが出るでしょうから、同じ様式を100年単位で維持すること
も考えにくいのです。

このような、状況をどう考えたらよいのでしょうか。
(続く)

<本日の絵>
maruman VIFART rough F2 今城塚古代歴史館展示埴輪(2)
埴輪スケッチ(今城塚古代博物館)137
前回の<本日の絵>に続く埴輪スケッチです。手前から、力士、盾、武人、鷹匠、
鷹狩(?)、牛。今城塚古墳の6世紀には、関東、東北では、人物埴輪が盛んに
作られたそうですが、畿内では、珍しいようです。刀に手をかけたこの大型の武
人埴輪は、巨大家の埴輪と並んで、今城塚古墳埴輪の目玉の一つです。

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古墳の美と景観美、埴輪の美と現代美(2)

さて、前回の記事で述べました3つの宿題のうち、一番目については、
ひたすら、最近の古墳時代の考古学成果についての最近の解説書を読
むことに専念しました。

このブログの主題であるスケッチにはなじまないので、詳細は述べま
せんが、古墳時代だけではなく、縄文、弥生、奈良の各時代において、
重要な発掘がなされていて、あたかも物証をもとに捜査する警察の仕
事のようです。ありとあらゆる説が交錯していて推理小説を読むがご
としです。

定年後の男性(女性も?)が、古代史の論争にはまる気持ちがわかり
ます。

さて、話は、宿題の2)の、古墳景観の美と埴輪の美についての宿題に
移ります。

古墳修復の話は、完全修復された古墳、(例えば、神戸の五色塚古墳
などを実際に見てから、話題にしたいと思います。

そこで、残るは埴輪です。まずは、今城塚古墳で見つかった埴輪群のス
ケッチをしましたのでご覧ください。(<本日の絵>)

              埴輪
(続く)

<本日の絵>
maruman VIFART rough F2 今城塚古代歴史館展示埴輪
埴輪スケッチ(今城塚古代博物館)136
手前から、門と柵(一部)、鶏、大刀、家、巫女の順に描きました。
家は、日本列島で見つかった家埴輪では最大の大きさです。(170cm)

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古墳の美と景観美、埴輪の美と現代美(1)

ひと月前ほどに、高槻市の今城塚古代歴史館訪問と、真の継体天皇陵
とされる今城塚古墳スケッチについて、記事にしました。

この記事をきっかけに、私の心の中に三つの宿題が残りました。

1)一つは、たかだか、40年ほど、自分の狭い専門分野の中で仕事に没頭
  しているうちに、驚くべきほど日本の考古学的な発見が続き、日本の古
  代史の見方がまったく変わっていたことに唖然としたこと。

  そして、突然、これらの考古学の成果に無知であったことに対する無念
  さがが湧いてきて、これではいかん、日本人として、せっかくの学問の成
  果を常識程度に身に着けなければという気持ちが起ったことです。

  (ボランティアの女性に、現在歴史館が公募している論文・エッセイに
  応募したらと薦められたことも、きっかけになりました。無知のままでは、
  応募の資格すらありません。)

2)二つ目は、古墳のスケッチをしているときに思ったこと。
  自分は今、古墳公園として、修復整備された景観をスケッチしているが、
  何が魅力でこの景観をスケッチしているのかという問題意識です。

  以上、少し理屈っぽい言い方しかできないのですが、これまで多くの都市
  公園をスケッチしてきたときの感性とは違うものを感じたのです。それが、
  一体何なのかが気になったのです。

  (その後、私が知らない間に、日本全国で、古墳の復元と遺跡公園化が行
  われ、どこまで復元したらよいのか、考古学的、景観学的課題として問題に
  なっていることを知りました。そういえば、この問題はアンコールワットの修
  復援助において、各国の修復方法に対する思想の違いからくる問題、お隣
  中国での、考古学的な背景を無視した、最近の歴史的建造物の強引な復
  元ブームの問題などとつながっている気がします)

3)三つ目は、やはり「美」に関係していることです。古墳といえば、埴輪につい
  て、語ることなしにはいられません。実は、今城塚古墳で発見された大規模
  な形象埴輪と配置に関する情報から、埴輪の役割に関する解明が大いに進
  んだことをボランティアの女性から伺いました。

  今城塚古墳 今城塚古墳 今城塚古墳

  その後スケッチすることにより、縄文時代の土器や土偶の美が現代の美の
  価値観から語られているように、埴輪の持つ美が気になりだしました。
  (意外に、埴輪については、美の観点では語られていないようなのです)

以下、埴輪のスケッチをご紹介しつつ、以上の宿題について今考えていることを
記事にしていきたいと思います。
(続く)

<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(東海道新幹線)
人物スケッチ(東海道新幹線)129
人物スケッチは、頭から描き始めるので、なかなか足の先まで描けません。
毎回、不満な気持ちが残ります。

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板千夏個展「マルシュ コロール フランスを描いた色彩市場」

火曜日から、東京に戻っています。

丁度池袋教室の板千夏さんの第2回目の個展がありましたので
行ってきました。

場所は、文京区のカフェ「喫茶おとら」です。
板さんの第1回の個展と同じ場所ですが、その時に行った道筋を
ほとんど覚えていず、少し迷いました。

    板千夏展 板千夏展

平日にも関わらず、絶えず、作品を見に人々が訪れており、板さん
の人気が伺えます。

私が入った時も、60代のご夫妻、そのあとから若い女性が一人づ
つ、さらには、中国の留学生とその友人と思しき若い女性の二人連
れなど、続々と訪れていました。

さて、今回は題名にある通り、フランスでの作品の展示が中心です。
(作品については、板さんのHPをご覧ください

いずれも、やさしい線描(強さもあり)に、これぞフランスと感じさせる
透き通った彩色。しかも、グラデーションや濃淡を駆使して単調にな
っていない、独自のスタイルを感じます。

最後に、最近続けている、素早いスケッチ(カフェスケッチ)をして、帰
りました。(<本日の絵>)

<本日の絵>
maruman VIFART rough F2 喫茶おとら(板千夏個展会場)(線描)
おとら(板千夏展)
男性のマスターがカウンターにいるのですが、座ったきりなので、隠れてしまい、
描くのをあきらめました。

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ならまち探訪(10) ついにスケッチ

さて、いよいよならまち探訪の最後です。
日の長い季節にもかかわらず、そろそろ夕暮れも間近な時刻に
なってきました。

     ならまち ならまち

椿井(つばい)小学校という、由緒ありそうな名前の小学校の前に、
なんともごつい瓦屋根の古い家を改装したカフェがあり、ころもよし、
というわけで、スケッチすることにしました。

描いている途中から、店のオーナーらしき若い女性も花の世話を
しはじめたので、ついでに描きこみました。

なお、後で調べると、椿井小学校は、奈良で一番古い小学校のよう
です。(もしかしたら、日本で一番古い?)

<本日の絵>
maruman VIFART rough F3 ならまちスケッチ
ならまちスケッチ138
小学校の生徒も列をなして通っていたのですが、すぐに通り過ぎてしまうので、
描くのはあきらめました。

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ならまち探訪(9)

最初は、闖入した私を気にして、出てきたのかと思った執事さんは、
実は背後から近づいてくるホテルのお客さんを出迎えていたのです。

玄関から、はるかかなたのこんなところまで出迎えるとは、さすがで
す。

さて、建物ですが、想像以上に大きく、威容があります。設計は、東京
駅を設計した辰野金吾、片岡安だということですが、レンガ建ての東
京駅からは想像できない和風様式です。

      ならまちならまち

          ならまち

奈良ホテルの建築を堪能してから、大乗院の庭園横を通り、ならまち
の方へ戻りました。

その途中、「陰陽町」という、古都にふさわしい名前の町に来ました。
そこには、さしずめ最近の漫画好き外国人なら、忍者が出てきそうと言
いそうな、立派な土塀が周りを囲む屋敷があります。

     ならまち ならまち

ところが、その屋敷の真ん前に、場違いな長屋が見えました。
しかし、戦後に建てられたよくある安普請の作りではなく、本体が和風、
玄関横に欧風の部屋という、近代建築一軒家をつなげたような形です。

好ましいと思うのは、古い建物に違いないのに、手入れがよく、現在も
人が住み続けていることです。

珍しいと思うので、下に紹介します。

     ならまち ならまち
(続く)

<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(近鉄奈良線) 
人物スケッチ(近鉄奈良線)122
昨日の絵と同じときに、小学生の姿を描きました。顔が、
小学生らしくないのが問題です。

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ならまち探訪(8)

薬屋さんを後にして、さらに北に進むと、有名な猿沢
の池にでました。

   ならまちならまち

町屋の多い場所に戻ってもよいのですが、京都のよう
な近代建築が見られないのが少し不満だったので、池
の周囲を東に向かい、大通りに出てみました。

すると、大きな公共施設見えたので、そばに近よると、
そこは「ならまちセンター」という施設でした。上階に図
書館があるので、上から周囲をみることにしました。

予想通り、窓から景色が見えます。東の窓からは、明治
の匂いがする屋根が、樹木の向こうに見えます。

         ならまち

これは確か、奈良ホテルというのではなかろうかと見当
をつけ、向かうことにしました。

奈良ホテルという指標を見つけたので、それに従って進
むと、住宅地の中に、なんと典型的な和洋折衷近代建築
があらわれました。

ならまち ならまち ならまち

結構、維持管理状態もよいので、門に近寄って見ると、この
建築を売りにした、宿であることが判明しました。宿泊代も
結構リーズナブルで、もしかしたら外人観光客向けかもしれ
ません。

この宿の周辺の道路から、それらしい門があったので、進み
ます。(あとからそれはホテルの裏手からの入口だったことが
わかりました)

坂を上がっていくと、最初に教会、(近寄らなかったので、古
いのか新築かわかりませんが、形はレトロです。
さらに、進むと、南側に、日本庭園が広がります。(旧大乗院
庭園との看板があります。)

ならまち ならまち ならまち

さらに上にのぼり、大きな通りに出ると、目の前に、執事然と
した男性が、右往左往しています。

           ならまち

何事かと、目を凝らしました。
(続く)

<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(近鉄奈良線)
人物スケッチ(近鉄奈良線)121
大阪から奈良に行くときに出会った小学生たちを描きました。

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六甲スケッチ、彩色しました。

以前紹介しました線描の色塗りを完成させました。

水を描くという教室の課題として沢を選んだのですが、
難しいですね。実際は、光に照り映える水面を、その
とおりに描くと、ほとんど真っ白になってしまいます。

そこで、塗り残しの量を加減して、<本日の絵>に示
す程度に白の部分を残してみました。

なお、教室で指摘されたのですが、一般には川の流れ
は、手前に流れるように描くのが普通だそうです。

実は、この絵は六甲山を背にして描いています。したが
って、流れは、手前から向こうへです。

しかし、見る人は反対の流れとしてみるのでしょうね。

<本日の絵>
ワットマン F6 六甲の沢
六甲の沢(彩色)(淵修正)
ワットマンは、マスキングは使えないので、塗り残しで白い部分を
作っています。ただ、塗り残しでは、細かい形を残せないので、手
前の川の部分は、あとで白の水彩ペンで、白い線をいれました。
しかし、技量が伴わないせいか、不満の結果です。今後の修練が
必要です。

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ならまち探訪(7)

「ならまち振興館」を出て、前の通りを北に進みます。

どうやら、ここからが、本格的な「ならまち」のゾーンのようです。

まず、「格子のある家」、そして元興寺の旧境内址の町屋群が、
ならまちの核をなしています。

ならまち ならまち ならまち

    ならまち ならまち

もちろん、元興寺の本堂址もありますが、現在のすがたからは、
往時をしのぶものはほとんどありません。

ならまち ならまち ならまち

夏の日差しに、色とりどりの草花が咲いているのを見るにつけ、
ここ奈良では、平安以降に日本人の情感として取り入れられた、
「もののあわれ」や、芭蕉が詠んだ「夏草や・・・」とはまた違う感
慨に襲われます。

あえて言えば、乾いた、大陸的な情感の何かでしょうか。

さて、感慨にふけるのもいいが、このブログの主題であるスケッ
チはどうしたという声が聞こえてきそうです。

ご安心ください。ついに見つけました。これまでは、碁盤の目の
ような道路の中での町屋なので、もう一つピンとこなかったので
すが、由緒正しい町屋の隣に、にぎやかな看板で彩られた薬屋さ
んがありました。
一目で気に入りました。

  ならまち ならまち ならまち

いいタイミングで二人の職人さんが、塀の修理をしています。
この職人さんの姿を入れて、スケッチしようと何度もいきつもどり
つしました。

しかし、いかんせん、よいポジションは、強烈な日差の真っただ中、
暑さが和らいだ季節に泣く泣く延期です。

次回のために、写真だけは撮って、その場を離れました。
(続く)

<本日の絵>
ワットマン SM 京都・新京極商店街
新京極110
新京極商店街と六角通の交わるところに広場があります。そこからの
商店街と通行する人々が、京都の生きた街を描くのにちょうどよいの
ではと試し書きのつもりで描きました。

建物の上の方から描いたので、肝心のショッピングする人々の部分が、
あまりにも下の方になり、中途半端ですが、もう一度大きい紙で描きな
おすつもりです。

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