スケッチ作家、渡邉崋山発見(1)

このブログでは、線描の観点で様々な作家の
作品を見てきました。

仙台の図書館の美術関係の本を、そのような
眼で探しつくしたと思ったら、思いがけない
ところに見落としがありました。

ドナルドキーン著「渡邉崋山」を日本人の伝記の
書棚で見つけたのです。

渡邉崋山については、私と同じ姓であるだけで
なく、はるか昔、学生時代の下宿のおばあさんが、
崋山と同じ、田原藩家老の娘だったこともあり、
以前から何となく気にしていた人物です。
(おばあさんから、御一新のときには、静岡に逃れた
とか、徳川慶喜を「よしのぶ」ではなく、「けいき」
様と呼ぶのに譜代大名の家ならではの話で、一気に
江戸時代にひき戻されたものです)

とはいえ、あの国宝の肖像画を描く謹厳実直な人
物という程度のイメージ。手に取ったのは、「明治
天皇」を書いたドナルドキーンが、どのように日本
人学者とは違う見方で崋山をえがいているかという
意識でした。

ところがどっこい、口絵をみてびっくり。彩色された
旅スケッチの素晴らしいこと!

渡邉崋山 渡邉崋山2 
        渡邉崋山3

「四州真景」(重文)です。描いた年は文政8年(1825
年)。信じられません。この近代性。現代の画家が描い
たといっても通用します。

記憶では、これまで教科書や一般書に出てくる絵は、
肖像画ばかり。しかも政治家としての崋山の記述のみ
で、崋山の絵、しかもこのような素描に言及している
例は記憶がありません。

事実、キーンはそれを意識してか、崋山の絵について、
著書のほぼ半分をさいており、これまでと異なる崋山論
を打ち出せたという自負があるようです。

このスケッチについては、「崋山の画家としての才能を
存分に示している」とし、「おそらく急いで描いたものと
思われるが、描線は絶対的な自信に満ちている」と評して
います。

続けて「これらの場所は、、とりわけ詩的情趣に富んで
いるわけでもないし、特別な宗教的意味を持っているわけ
でもない」とし、「自分の生きていた時代の日本の姿を
そっくりそのまま描き残しておきたかったのではないか」
と筆をすすめています。

そう、名所や史跡ではないということ。そして、現在を切
り取る。まさにこれは、私たちの線スケッチの立場に近い。
それがこのスケッチの近代性を感じた理由の一つに違い
ありません。
(続く)


<本日の絵>
本日の絵は休みます。

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新宿ゴールデン街 東京路地事情(4)

先週、行きそびれた、新宿ゴールデン街を、
教室が始まる前に訪れました。

有名な場所だけあって、まわるのにも一苦労です。

まず、新宿区役所。いつみてもなんとも言えない
感情が湧いてきます。
いかめしさを感じる建物の周り一帯は、キャバレー
やカラオケなど水商売の店であふれ、その対比に
思わず写真をとりました。

    新宿・区役所

区役所の前を進み、右に曲がるとゴールデン街の
入口に出ます。

    新宿・ゴールデン街4

昼間なので、ほとんど人気がありません。

新宿・ゴールデン街3 新宿・ゴールデン街2 

やはり、スケッチには人々が集う夕暮れに来なけれ
ばならないようです。

    新宿・コゴールデン街5

ゴールデン街の南の通りに、こちらをカメラでねら
う男がいました。なかなか勢いのある線で描かれて
いるので、こちらも思わずカメラを向けました。



<本日の絵>
本日の絵は休みます。

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講評会を振り返る 

本日の講評会は、考えさせられました。

N先生の講評会では、まず自分の作品についての
コメントを述べ、そのあと、指名された2名の生徒仲
間からコメントをもらい、最後にN先生が講評すると
いう手順で行われます。
今回指名された対象とする作品にはまいりました。
悪いところがない。完成度が高い作品だったのです。

       新宿教室・講評会作品

最初は、Nさんの作品。新宿御苑の大ヒマラヤ杉です。
(写真右)
同時に、最近個展に出展した全紙の森の巨木の絵も
コメント対象です。

線描がNさん独自のタッチなのはもちろん、色が素晴ら
しい。これまたNさん独特の色の冴えです。

これはもう自分がコメントできる対象ではないと直感的
に思いました。

結局、Nさんには、この完成度に満足せず、新たな方向に
向かってチャレンジを続けてくださいというのがせいぜ
いでした。

一方、2回目に指名されたIさんの作品。これまた完成度
が大変高い作品です。(写真左)

作者も「今回は、大変満足している。楽しんで描けた」
と満たされた気持ちをいわれるのです。

さあ困ったどうする。確かにこの作品は、紅葉の落葉
の前景から、中景にはかわいいしぐさの子供たち、は
るかかなたに人々がいて、新宿御苑が表現されていま
す。
加えて、女性ならではのやさしい感じが出て、見る側を
リラックスさせます。

結局、この作品のよさをいう前に、あえて、以前の作品、
例えば、東京三十六景展の「新柳橋」方がよいと感じる
とのコメントをしました。

今思うと、Nさんの場合と同様、この作品のよさを分かっ
た上で、作品の完成度に満ち足りて、ここにとどまって
ほしくない、という気持ちが、働いたようです。

せっかく、満足されているのに水をさすコメントになりま
したが、あえて自分の心のうちを探ると、自分もいつかこ
うなりたいといううらやましいという気持ちが働いたため
ではないかと思います。

コメントも、自分を映す鏡。つくづく難しく、怖いものだ
と思いました。

なお、最後に自分の絵を示します。(まだ色塗り不完全の
まま提出しました)N先生からは、後ろのプラタナスの並木
の並びに魅力があり、ここに焦点を当てた方がよいのでは
とのコメントをいただきました。

まだ、描き直す気力は出ません。

新宿御苑・プラタナス並木3


<本日の絵>
本日の絵は休みます。

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「新宿御苑プラタナス並木」スケッチ追い込み

2週間前の教室の野外スケッチの作品を、土曜日
の講評会までに完成させなければなりません。

けれど、線描を完成させたのが、先週金曜日。
(<本日の絵>をご覧ください)

ぐずぐずとしているうちに日が経ち、やっと昨日から
塗り始めました。(途中経過を写真で示します)

新宿御苑・プラタナス並木

ウォーターフォードの色塗りは、今回初めてです。
けれど、いつものワットマンとかなり発色が違い、
内心がっかりしています。
少しくすみ気味な色で、好む人と好まない人と、は
っきり分かれるのではないでしょうか。

どうやら色塗りの完成はおぼつかなくなってきました。


<本日の絵>
ウォーターフォード F8 新宿御苑プラタナス並木の紅葉
新宿御苑(秋)(blog)

最近、線描だけでもいいんじゃないかと思うことが
多いのです。この作品もそうでした。
色塗りなどどうでもよくなってきました。あるいは、
部分色塗りぐらいでいいんじゃないかと。
実は白状すると、結局色塗りが怖いのです。
大抵自分の思い描いていたようにならないので。

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新宿「歌舞伎町界隈」 東京路地事情(3)

思い出横丁を出て、ガード下の通路を進み、東口に
出てきました。

狙いは歌舞伎町。久しぶりの歌舞伎町です。

新宿・歌舞伎町 新宿・歌舞伎町2

歌舞伎町といえば、N先生の都会スケッチの中で
新宿の混沌としたエネルギーがこちらに伝わる
作品
が思い出されます。

ちょうど、おなかがすいてきたので、お店探しをし
ているうちに、新宿区役所を過ぎ、新宿三丁目方
面まで来てしまいました。

のども渇いてきたので、新宿五丁目交差点角の
Kirin Cityでビールを飲みながらの昼食をとること
にします。

なんとなく目を先にやると、信号待ちの人々と車の
往来がちょうど見下ろせる位置です。
料理が来る間、カフェスケッチならぬ、ビアレスト
ラン・スケッチをすることにしました。
(<本日の絵>をご覧ください。)


<本日の絵>
マイブック 新宿五丁目交差点 kirin cityからの眺め
新宿三丁目kirinCity460
交差点の人々を描くのは、今年の上野秋葉原・ヨド
バシカメラ全紙スケッチ以来です。人々のしぐさを
選んでいる暇はなく、現れる人を片っぱしから描き
埋めることにしました。

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新宿「思い出横丁」 東京路地事情(2)

仙台の路地と東京の路地、直接はつながらないとお思い
でしょうが、実は私の頭の中ではつながっているのです。

以前読んだ俵万智さんの雑誌の記事の中に、新宿のゴ
ールデン街で、アルバイトをしていることが書いてありま
した。
そして出産後、何年か前から、彼女が仙台に移住し、子
育てをしていることも、よく知られています。
(NHKの日曜美術館の司会をしていたことも、美術つなが
りと勝手に思っています)

というわけで、かなり強引ですが、彼女を通じて、仙台の
路地と東京の路地が私の頭の中でつながっているという
わけです。

まずは、新宿西口をめざしました。そこには、戦後闇市
から出発した、「思い出横丁」があります。

新宿・思い出横丁 新宿・思い出横丁2 

さすが新宿、昼間から他場所にないオーラ(路地に対して
は似つかわしくない表現ですが)を発散しています。

ガード脇を進むと、布に印刷された絵巻物が現れました。
どうやら、ここ数年にわたって進められているアート・プロ
ジェクトのようです。

新宿・思い出横丁3 4新宿・思い出横丁

名付けて「街並み絵巻プロジェクト」。
(絵の詳細は、ここをご覧ください)

昼間なので、まだ活気はありませんが、外国人観光客が
行きかう中、スケッチポイントを探してみました。

結局、横丁そのものではなく、横丁を背にしながら、東口
へ抜ける地下道の入口に向けてマイブックスケッチをする
ことにしました。
(<本日の絵>をご覧ください。)


<本日の絵>
マイブック 新宿「思い出横丁」からガード下東口への通路入口を望む
新宿思いで横丁461
通路だけあって立ち止まる人はありません。スナップショットの
写真を参考に、人物を描いてから、まわりの建物を描きました。
手前の男性は、途中からの生描きです。缶コーヒーを飲む姿
に、これをいれなければと思い、とっさに描き加えました。

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有楽町ガード下 東京路地事情(1)

仙台路地事情を記事にするからには、東京を無視
する訳にはいきません。

仲町通りを過ぎた後、有楽町界隈の路地を調べて
みることにしました。

有楽町駅 有楽町路地

有楽町駅を過ぎると、路地というのか、ガード横
の道が気になりだしました。

有楽町路地2 有楽町路地3 有楽町4

微妙にカーブを描く線路と、レンガのアーチ模様が
なんともよい雰囲気を醸し出します。

暗くなってきましたが、マイブックスケッチを試み
ました。
(<本日の絵>をご覧ください)


<本日の絵>
マイブック 有楽町ガード下
有楽町ガード下459
まだ、本格開店には早く、店員の女性が準備している姿を
入れました。
アーチのレンガで黒く塗りつぶしている個所は、本当はグレー
がかった茶色です。レンガ色とグレーがなかなかいい味を
出しているのですが、これは色塗りでしか表現できませんね。

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秋たけなわ(丸の内・仲通り)

新丸ビル、サピアタワーという東京駅近辺で、会議づけ
で過ごしました。
日暮れも近く、久しぶりに仲町通りを歩いてみることに
しました。

まず、丸ビル1階のフロアから仲町通りに抜けます。

このフロアでは、いろんな催し物があって、変わり種の
展示物があり、スケッチも悪くはないかもと考えていた
場所です。

今日は、福山雅治のCD発売のイベントで広告に使った、
恐竜でした。ちょっとスケッチにはと遠慮させていただ
きました。

  丸の内ビル1階2 丸の内ビル1階

さて、仲町通りです。夏の緑から様変わり、紅葉が始まっ
ていました。

十数年前丸ビルが取り壊され、建設中の「新」丸ビルが建
設されるのを眺めながら働いていたころから比べると、月
並み表現ながら、隔世の感があります。

丸の内・仲町通り

あの地味な三菱村が、このようなおしゃれな街に変わってしま
ったのですから。

このあと、ブリックスクエアを過ぎて、有楽町へ向かいました。

         丸の内ブリックスクエア(秋)  

<本日の絵>
本日の絵は休みます。

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「孤高の画家 長谷川潾二郎」展 (2)

会場に入ると、ほぼ生涯作品を展示しているのでは
ないかとおもえるほどの展示数でした。

ただ、この作家の特徴として小品が多いので、圧迫
感はなく、どこかの居間にいる感じです。

そしてありがたいことに、若い時から渡仏時代、帰
国後から現代までの変遷が一望できます。

中でも、印象深かったのは、荻窪風景を代表とする、
風景画です。

長谷川1 長谷川2 長谷川3

ありふれた場所ではありますが、画家の眼を通した、
木々の緑の表現が、なんとも言えないリズムを持ち、
それがこちらに美しさを感じさせるようです。

線スケッチの眼で見るせいか、油彩画にも関わらず、
私には下にある線が目に見えてきます。

一方、静物も、この画家独特の表現があるように思
います。
真横に区切る構図、現実にあるようで、よくみると
現実感がない器や果物、花卉。

長谷川4 長谷川5 長谷川8

さらに、長谷川を特徴づけているのは、グレイがかっ
た青。
これが、理知的な、静謐な、この世のものとも思われ
ない、という形容詞がつく所以でしょう。
現実から浮遊した感じがどの絵からも感じます。

長谷川6

この猫の絵も結局未完だったといわれるように、長谷
川は遅筆の画家として知られています。

けれど、これだけ「完璧」という絵を見、しかも彼は、
画壇から独立して絵をどこまでも追求し、売ることを
ほとんど考えなかったときくと、驚きでもあり、また
プロとは何かとも考えてしまいます。

彼は、どこまでも時間をかけて美を追求していく。
けれども、生活のための絵は描かない。

画壇、世間における競争といったものから、超越してい
るといえばよく聞こえますが、見方をかえれば、「おた
く」の姿勢ともいえないでしょうか。

よかれ悪しかれ、競争や世間にもまれることで、ひとり
よがりにならず本物になっていくのだとすると、長谷川
の場合、ひとりよがりにはならなかったのは、奇跡かも
しれません。

<本日の絵>
本日の絵は休みます。

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「孤高の画家 長谷川潾二郎」展 (1)

宮城県立美術館で開催されている、「孤高の画家 長谷川潾二郎展」に
行ってきました。

  仙台・長谷川麟二郎展3 仙台・長谷川麟二郎展

この美術館については、仙台の代表的美術館でありながら、これまで、
あまり記事にしてきませんでしたが、それは、たまたま取り上げたい展
覧会が続かなかったからです。

実は、昨年、このブログを始める前に、この美術館を訪れ、驚いたこと
がありました。

そのときは、常設展しかやっていなかったのです。他の人は知りませんが、
普通常設展の場合、事前の心の準備がないせいか、私の場合もう一つ気
がのりません。

ところが、思いがけず、美術館所蔵の「洲之内徹コレクション」の一部が
展示されていたのです。
(洲之内徹のコレクションが宮城県立美術館にそっくりあるとはまったく
知りませんでした)

このときは、長谷川潾二郎の「猫」が展示されていたか、記憶がはっきり
しませんが、仙台では書店で平積みの、「洲之内徹が盗んでも自分のもの
にしたかった絵」
の表紙の絵でなじみがあり、印象に残っていました。

今年になって、「日曜美術館」で長谷川の特集があり、はじめて、「猫」の
絵が長谷川の作品であることを知ったのです。

「線スケッチ」とは、およそ関係がなさそうなのですが、自分の感覚には合
っていそうです。
(続く)


<本日の絵>
本日の絵は休みます。

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