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「素描小感」、「草屋根と絵筆・画家向井潤吉よりのエッセイ」からの引用

表題の本の中に素描(線描)に関する記述がありました。
日本画家と洋画家の姿勢の違いについて言及しているので下記に紹介します。

<前略>したがってデッサンする態度と眼に、日本画家と洋画家のしれぶ、微妙な差異のあることが、結果的には大きく分かれて行くことが注目される。それは、花や果物を描く場合よりも、裸体や着衣の人物を前にした時の方が特徴がはっきりする。
 洋画の場合は、まず着衣、裸体のいづれの場合でも、大掴みに対象の姿態なり、輪郭を捉えて徐々に細部を描き進んでいくのが普通だが、在来の日本画家の技法を見てみると、線の美しさ、面白さを追求することから始まるので全体の把握が薄ぼけて弱くなりがちである。そのどちらを選ぶということよりも、なお大切な点は、人物のように大きいものに対したときはかなりの距離が必須であり、そのためには出来れば大きい部屋で作業することが要求される。
<中略>かつて藤田嗣治とよく同席したが、氏は煙草の空き箱や小紙片にたえず鉛筆を走らせて、人々の顔を丹念にスケッチしていた。おそらく手首の訓練をしていたのであろう。適当な紙や鉛筆のない場合は、手をつっこんだズボンの中で、やはり、盛んに指先でデッサンを試みていたのだと想像している。


日本画家、洋画家の違いの指摘も面白いですが、それとは別に、藤田嗣治のような巨匠でも、絶えず指の訓練をしていたという箇所は、教室で「線描を津念い練習することが必要です」と常に生徒さんに言っていることと重なります。「なぜなら、文字を書くのに小学生以来何万回も文字をかいているから意識せずに書けるのであって、スケッチの線描は、文字よりも大きいので、大きく腕や手を動かすことは脳にとって初めてのこと。ですから、脳に慣れさせるためには何回も練習することが必要になります。いわばリハビリと同じと考えてください。」と説明してきたのでよかったのだと確認させてくれました。

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線描の言語表現:「松本竣介 線と言葉」(平凡社、2012)より(3)

歩いてゐて好ましい建物にうちあたることは日常の習慣になってゐる。
その時僕は荒々しい数本の線でその建物を失敬してくるだらう。


真白な地の上に黒い線を一日引ひてゐるだけで、僕の空虚な精神は満
足する。


<本日の絵>に示した1930年代の明るい青や緑の色調から、戦時下に
かけて内省的な暗い色調に変化していきますが、都会の建物や人物の
線描を捨てなかった松本の気持ちがよく表れています。
(終り)

<本日の絵>
松本竣介 郊外 1937
MatsumotoShunsuke_Suburban_Landscape_1938(縮小)

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線描の言語表現:「松本竣介 線と言葉」(平凡社、2012)より(1)

「線スケッチ」は、線描の表情や表現方法が絵の要となります。
以前から、線描に関する言語表現について目にふれた折に書き
留めていました。

いつかまとめて記事にしたいと思っていたのですが、なかなか
まとまりません。これまでは断片的に紹介してきたかと思いま
すが、まとめようとするからいけないのであって、目にとまっ
たら都度記事にしていけばよいという気持ちになりました。

今回は、表題の本の中で、編集者が松本松本竣介が著した文章
の中から線に関する表現を引用していたので、紹介いたします。

なお、松本竣介については、2013年にシリーズで「生誕100年」
の展覧会訪問記を記事にしていますので、ご興味あればご覧くだ
さい。

「生誕100年 松本竣介展」訪問記(1)→ココをクリック
「生誕100年 松本竣介展」訪問記(2)→ココをクリック
「生誕100年 松本竣介展」訪問記(3)→ココをクリック
「生誕100年 松本竣介展」訪問記(4)→ココをクリック
「生誕100年 松本竣介展」訪問記(5)→ココをクリック
「生誕100年 松本竣介展」訪問記(6)→ココをクリック
「生誕100年 松本竣介展」訪問記(7)→ココをクリック
(続く)

<本日の絵>
松本竣介 油彩 立てる像 1942
800px-Matsumoto_selbst_stehend(縮小)
(出典:wikimedia commons)

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2015年度・第12回永沢まこと賞をいただきました!(2)

今回、砧公園の桜の絵を例示していただいた機会に、当時の
ブログ記事
を読み返しました。すっかり忘れていましたが、当時、
すでにこの砧公園の桜の作品の講評の中で、線描についての
持論を展開されていたのです。以下、再掲載します。

(前略)以下、「線」と「色」に対する先生のコメントの要点です。

 ・線スケッチの場合、色よりも線の出来が見抜かれる。線を
  見る目を持たなくてはならない。
 ・線には三つの性質がある。
   1)太さ(太いか細いか)
   2)スピード(速度)
   3)圧力
 ・1)は、ペンの種類で決まり、3つの性質の中では重要度
  は小さい。
  2)は、絵に速さ、時間性を与える。
  3)は、筆圧に関係し、3つの中では一番重要である。なぜ
  なら、描き手の意識が入っているから。
 ・どんなに色をキレイに塗っても、土台となる線に、その人が
  かけた意識が表れていなければ、化粧と同じで表面だけの
  キレイさでしかない。
 ・なぜ、自分がフェルトをペン先に持つ水性サインペンを用い
  始めたのか。これがあって、はじめて筆と同じように、描き
  手の意識を、筆圧で表現できるようになったから。

実は、教室では、ことあるごとに、以上の趣旨は、伝えておられ
るのですが、線の性質の分類と、数十年前NYで、N先生が見つ
けられた、日本の技術革新の成果であるフェルト水性サインペン
の必然性について聞いたのは初めてのような気がします。

どうやら、あれほど、促されたのは、私の絵を題材にして、桜と
いうテーマを線で表現することの難しさ、線スケッチにおける線
の本質を生徒全員に伝えたかったからなのでしょう。


今回の受賞を受けて、本来ならばさらに高みに向けて発展させ
なければならないのでしょうが、線描の奥深さをあらためてかみ
しめて線描にこだわってみたいと思います。

<本日の絵>
ワットマン F4 昼下がりの京都・先斗町通り(彩色)
京都・先斗町(彩色)
先生から受賞を知らせるNEWSLETTERを事前に送付いただきました。その
NEWSLETTRに例示として掲載されていた上記作品は、オフィシャルブログ
には載せられていないので、参考のため示します。

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菱田春草 《賢首菩薩(けんしゅぼさつ)》の線描について

菱田春草についての日曜美術館の番組を見ていたところ、
現在開催中の展覧会の中で、《賢首菩薩(けんしゅぼさつ)》
の線描について、出演者の芸大の教授の方が面白い表現
をされていました。

(賢首菩薩の絵については、ココをクリックください

すなわち、春草はこの作品で「縦に削る線」を用いていると。

実際に、紙を削っているのではありません。筆で、縦に紙を
削るように線を引いている。これに絵の魅力の要因の一つ
があるというのです。(熱のこもった口調から、この芸大教授
の方が発見した見方だと思います。)

      Hishida_Shunso.jpg
        (出典:wikimedia commons)

このブログでは、これまでに線描に関して折に触れて書いて
きましたが、このような見方がまだあったのかと思い、記事に
しました。

<本日の絵>
    菱田春草  黒き猫(1910 重要文化財) 
     209px-Kuroki_Neko_by_Hishida_Shunso.jpg
      (出典:wikimedia commons)

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