人物スケッチ(近鉄京都線)

前の記事と同じ、近鉄京都線でのスケッチです。

<本日の絵>
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人物スケッチ(近鉄京都線)142(縮小)

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江戸、東京の瓦屋根(5) 「風立ちぬ」余談

このシリーズの(3)で、「風立ちぬ」の背景画の瓦屋根について記事にしましたが、
話題作にも拘わらず、感想を書かないのも悪い気がしていたので、最後に「風立ち
ぬ」を見て気づいたことを紹介してこのシリーズを終えることにします。

すべてのレビューを見たわけではありませんが、現代の若い女性から抗議を受け
てもおかしくない内容がふんだんに出てきますが、まだ誰からも、そのことについて
指摘が無いようです。(レビューを調べたのは、公開して1週間後ぐらいですから、
今は抗議されているかもれません)

それは、以下の点です。

1)映画が始まって比較的早い段階で、堀越二郎の同僚でライバルの本庄が、「仕
  事をするために、身の回りの世話をしてくれる嫁を見つける云々」という内容の
  セリフが流れた時に、少し身が固くなるほど緊張しました。
  なぜなら、言い回しは、正確に覚えていませんが、明らかに、当時の男性が普
  通に口にする言い方だったからです。今、そんなことを言ってよいのかと。

  今まで、忘れていた亡霊が出てきたようです。その文化を受け継いでいる団塊
  世代の私ですら、そう感じたのですから、それだけ女性蔑視ととられかねない
  言葉を聞くと、若い人は、私以上に驚くはずです。 

2)また、堀越二郎も、結婚後の態度は、今の女性の立場からは必ずしも望ましい
  ものではありません。あえて言えば、仕事を優先する(本当の堀越自身がどうだ
  ったかは知りません)姿を、当時の男性(特に、帝大出のエリート技術者)ならば、
  いかにも、そうだろうという姿を意識的に描いているように見えます。
  そして、奈穂子の態度も、私から見ても歯がゆいものを感じます。

3)これを、どう見るか。宮崎駿自身も持つ、当時の精神文化を素直に映し出してい
  るのだとも考えられます。あるいは、当時の街の姿を忠実に再現するだけでなく、
  精神文化までも、忠実に再現しようとしたのかもしれません。
  (最近の時代劇が、姿かたちだけが昔のままで、話す言語は、現代語で、考え方
  も現代人というむちゃくちゃな状況に対するあてつけなのかどうか)

上述のように私が感じてしまうほど、何事も「キレイゴト」でなければならない現代
の風潮に、私自身も染まっていたなと考えさせる映画でした。

実際、あらゆるところで煙草に火をつけるシーンに対して抗議をした団体が出たり、
この映画ではありませんが、「はだしのゲン」貸出を自主規制する教育委員会が出
たりと、汚いもの、タブーであるものを覆い隠す動きが強まったようです。

その意味で、話題作になる要素が満載の映画だといえます。(大人向けか、子供向
けかという論争も)

いずれにせよ、この映画に関する色々な評価の中で、共通するのは、あまりにアニ
メ(宮崎アニメ)に対し、何もかも期待する態度です。
通常のシリアスな映画や純文学の方が、大人に深い感銘を与えるけれど、わずか
な数の観客であるのに対し、アニメは、世代を超え、通常の映画や本ではとても獲
得できない、膨大な観客に影響を与えます。それだけでも、大変な効果だと思われ
ます。

私自身は、震災前の瓦屋根の描写に惹かれたように、宮崎が思い描く戦前の日本
の風景を楽しむだけで十分でした。

なお、背景画といえば、YOU TUBEで数年前からジブリの男鹿和夫の背景画の動
画を見つけて楽しんでいます。印象的な絵が多いので、ご参考までに下に挙げます。




<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(千代田線)
人物スケッチ(千代田線)160
頬杖をつき、何を想うのか。(電車では珍しいポーズ)

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江戸、東京の瓦屋根(3) 変遷を辿る

関東大震災で、下町や、江戸期以来続いた商業地域が一変したのですが、
明治から、昭和初期、戦後と東京の街並みの変遷を知るために、本を探す
ことにしました。

結果として、これまでに下に示す写真の本を読み終えました。

1)木村壮八著、新編 東京繁昌記 (岩波文庫)
2)今和次郎著 新版大東京案内〈上〉 (ちくま学芸文庫)
3)今和次郎著 新版大東京案内〈下〉 (ちくま学芸文庫)
4)川添登著  東京の原風景 (ちくま学芸文庫)
5)キャサリーン・サンソム著 東京に暮す―1928~1936 (岩波文庫)

以上は、ベストの本かどうかはわかりませんが、少なくとも東京の街につい
て関心を持つ者にとって、木村壮八の1)、今和次郎の2)、3)は必読の書
だと思います。

東京書籍

詳細内容の紹介はここではいたしませんが、特徴を上げますと、今和次
郎は、どこまでも学者の語り口。データ主義。これに対して、木村壮八の
それは、実作者の語り口。取り留めもなく話題が広がりますが、実に味が
あり、またその現場の観察からくるものの見方に魅せられます。
(本人の挿絵も都市スケッチの観点から必見です)

一方、4)と5)は昔購入した蔵書の中から選んで、再読したのですが、4)
では庭園都市としての見方(川添)に改めて興味を呼び戻され、5)では、
生きていれば、一緒に東京について語り合いたいと思うほど、サンソム夫
人の素晴らしい人柄が伝わります。(友人の外国人女性の画家のスケッチ
も日本人とは異なる線描に注目)

さて、このシリーズの冒頭に挙げた疑問、「なぜ、東京の家並みの屋根は、
うすっぺらなスレートやトタンばかりなのか?」に戻ります。

詳しい説明は端折って、以下、解答(仮説)です。

仮説:江戸期の瓦屋根は、明治の近代建築の建築にも拘わらず、関東大
震災まで瓦屋根の街並みが続いていたが、大震災により壊滅する。震災
後、大正から昭和初期にかけて、耐震性を考慮してコンクリート建築が増
加、昭和初期の東京の街並みが作られるが、太平洋戦争の空襲により壊
滅する。
戦後の復興の過程で、東京では即効性の、トタン屋根、スレート製の瓦が
応急的に用いられる。(この頃に、東京の屋根のイメージができる)
昭和30年代になり、高度経済成長の波に乗り、大量生産、安くて軽く、規格
が維持できる新建材による瓦が開発され、普及していく。さらに東京オリン
ピック開催のため、この傾向はさらに強くなり、新型瓦が主流になり、現在
まで続く。東京では、もはや昔ながらの瓦が用いられることはなかった。

以上が、東京で本格的な和様の瓦屋根が少ない理由の仮説ですが、関東
大震災、空襲に加えて、戦後の資本主義経済原理による安価で軽い瓦の
規格品の大量生産が、追い打ちをかけたと思われます。特に、高度成長の
信奉が、古いものを捨て去り、新しいものに建て替える度合いが、東京が
大きかったと思われます。
(一方、東京以外では、小江戸と呼ばれる川越の商家や、千葉県の田舎の
立派な瓦屋根の家々が思い出され、瓦屋根に関する限り、東京はかなり特
別な状況なのではないでしょうか)


<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(千代田線)
人物スケッチ(千代田線)159
めずらしく、目を見開いた女性。(最近は、スマホを見るために
下を向いているか、寝ているかどちらかです)

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江戸、東京の瓦屋根(3) 「風立ちぬ」に見た

それでは、幕末以降明治期、商家や一般家屋がどうなったので
しょうか?

少なくとも、私の場合は、残された一般家屋の遺構から、単独の
瓦屋根の家屋のイメージを推測するだけで、街並みの様子を想
像するとができません。(名所となるような近代建物は、絵葉書で
いくらでもみることができますが)

一方、昭和以降になると、コンクリートの建物が並ぶ街並みが東
京の都市風景として頭に浮かびます。
(藤牧義夫や松本竣介の世界と重なります。)

ところが、7月になって、テレビで宮崎駿の「風立ちぬ」の紹介番
組が放送されるようになり、関東大震災のシーンがほんの少し映
し出された時に、重厚な瓦屋根が連なる東京の街並みが描かれ
ているのを見て、やはりそうだったのかという思いがしたのです。

「生きねば」ならぬ「見なければ」という思いで、公開日(7月20日)
の翌週の平日、この話題作を見に出かけ、瓦屋根の情景をたっ
ぷりと味わうことができました。

参考までに、以下、風立ちぬの予告編動画、および関東大震災
前の東京の街並みを描写した部分を予告編から抜き出して示し
ます。



風立ちぬ(トリミング)

風立ぬ2(トリミング)

これが本当だとすると、明治期の東京の瓦屋根の街並みの空白
が埋まったことになります。
(瓦屋根が連なる東京の情景は、私が知らない当時の写真に基づ
くのか、それとも想像で描いたのか、どちらかわかりませんが)

なお、大震災以外の背景は、全編、緑の山と青い空、白い雲が中
心の背景画で、戦前の暗い印象をとり払うかのように、昭和初期の
日本の風景が、これでもかと出てきます。

ただ、その中で、我が版画が常套手段の、夕暮れ風景が一部効果
的に使われているので、ご紹介します。(大きくは、下のサムネイル
をクリックください。)

           風立ぬ3(トリミング)

隅田川の戦前の情景は、藤牧義夫の絵巻や、最近では半藤一利
の「隅田川の向う側 私の昭和史」(創元社)に情景が描かれていま
す。今回の映画の絵は、その彩色版ともいえます。
(続く)

<本日の絵>
マイブック 人物スケッチ(千代田線)
人物スケッチ(千代田線)158
最近は、まず腕や手の表情に目を向けて、描いています。

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江戸、東京の瓦屋根(1) 若き日の疑問

日本の風景を考えるうえで、瓦屋根の家を抜きに語ることはできません。

以前、江戸、東京の瓦屋根について、一度日を改めて記事にしたいと予
告しました。


話は、長くなります。私の東京の屋根に関する疑問は、実は高校生の頃
に遡ります。(今から50年ほど前。東京オリンピックの頃。「三丁目の夕日」
が対象とする時代です。)

「なぜ、東京の家並みの屋根は、うすっぺらなスレートやトタンばかりなの
か?」(東京生まれの方には、気分悪くされる言い方でしょうが、申し訳あ
りません、当時、地方の人からみれば、東京の住宅の街並みはそういう
イメージだったと思います。)

実際、高校2年の夏、関西から、東京の親戚を訪ねた時に、車窓から見え
る家並みが、熱海を超え、小田原付近から、それまでの重厚な瓦屋根から
トタン、スレート屋根にガラッと変化し、横浜東京までそれが続くのです。

やはり、イメージは違っていなかったと思いました。

その後、しばらくこのことは忘れていました。就職して、横浜に勤め始め
ても、その疑問を思い出すことはなかったのですが、線スケッチをはじめて、
特に戦前の商家を描く対象として意識し始めると、俄然その疑問が大きく心
の中で占めはじめました。

前置きが長くなりましたが、次回以降、都会スケッチの関連で、この話題に
ついて書いていきたいと思います。
(続く)

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人物スケッチ(千代田線)156
ドアに立つ女性です。少し、遠いところから描いたので、久しぶりに全身が
入りました。

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