太郎と敏子 ~瀬戸内寂聴が語る究極の愛~(3)

最後に、敏子の作品(?)についてコメントします。

太郎そのものが作品であったというならば、彼女の才能は、
そのマネジメント力、プロデュース力、実行力にあることに
なります。

それだけならば、太郎を商品化するビジネスマンの姿ですが、
ドキュメンタリーの冒頭で、太郎が渡仏し、長期間滞在中に
交わされた往復書簡の朗読を聞いた印象は、むしろ細やか
な心をもつ文筆家です。

やさしい言葉だけを用いて情感豊かに表現しているように思
いました。非凡を感じます。まだ自分が何者か分からない若
き時代です。

けれど、その後太郎の横で、鬼気迫る姿で(という生存者の
説明がありました)太郎の言葉をメモにとり、著作に表してい
く姿は、すでにプロの文筆家に変じています。

ドキュメンタリーとして彼女の全人生を通してみると、はたし
て、彼女がもともと望んだ人生かどうかわかりません。

もしこれが公認の妻だったらどうか。それはそれで、はたか
らみて、家庭のひととして落ち着いて暮らす別の人生があ
ったかもしれません。

けれど芸術家のそばにあって家庭の女性としてではなく、自
分の才能を太郎を介して表現していくという道を選ばざるを
得なかったのだと思います。

改めて振り返ると、昔から気になる人たちがいました。(黒光
とモリゾは最近ですが)

岡本一平に対する岡本かの子
高村光太郎と妻、智恵子
三岸好太郎と三岸節子
竹久夢二と笠井彦乃
野口米次郎とレオニー・ギルモア(イサム・ノグチの母)
マネとベルト・モリゾ
碌山と相馬黒光

いつか取り上げてみたいと思います。
(画家と文筆家といえば、わがN先生と故宮本美智子氏との
関係をふと思い出しました。著作を読んでみる必要がありそ
うです)


<本日の絵>
Daler & Rowney アクアファイン 254X178mm ジャズプロムナードイン仙台での演奏
ジャズプロムナードインセンダイ166
前回の本日の絵で紹介した円形劇場を移動して、こんどは県庁近くの
公園内の野外劇場の会場に向かいました。トランペット奏者の体重
移動を表現したつもりです。


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太郎と敏子 ~瀬戸内寂聴が語る究極の愛~(2)

岡本太郎については、戦後のころからすでに有名人であっ
たと思います。

けれど今回のドキュメンタリーでは、あこがれの太郎と出会
い、秘書(兼恋人、実質上の妻)となり、心の葛藤をへてパー
トナー、プロデユーサー、最後には影の共同創作者にまで自
らを高めて、人生を主体的に築き上げていく敏子と、太郎の姿
をあわせて追っています。
(詳しくは、今後の再放送を見ていただくしかないのですが)

特に、瀬戸内晴海(寂聴)の出現以降の二人の心理的関係は、
とても複雑で、新たに発見された敏子の小説と日記の朗読を
織り交ぜながら、ドラマじたてで進行していくため、臨場感が
ありました。

結局、これまで報告されない新しい一人の女性の生き方(ある
いは、男女二人の生き方)が主題のようですが、それを強調す
るあまり、個人のプライバシー(日記)を、恋敵(といってよ
い)瀬戸内晴海に見せてしまうという制作者の姿勢に抵抗を感
じる人も多数いるかもしれません。

実際、岡本太郎が好きな人は、戦後の大半の太郎の創作活動
に、敏子の意志が入っているとなると、仮にそれが事実だとして
も受け入れられないのではないでしょうか。
(絵だけでなく、戦後の著作活動のすべてが敏子の文章である
という説明になっています。)

個人的には、岡本太郎の絵を好きになったことはありません。
これは岡本太郎の有名な言葉:

1.うまくあってはならない
2.きれいであってはならない
3.ここちよくあてはならない

という考えのもとに基づいた絵ゆえに、「不快感」が先に立つた
めだと思いますが、これはこれで太郎の意志が達成されている
とも言えます。

一方、岡本太郎が撮った写真はいずれも素晴らしい。もう何十年
も前から、彼の著作のモノクロ写真を見るたびに、ひそかに思っ
てきました。

線スケッチをはじめた現在、木村伊兵衛など、あらためてスナップ
ショット写真に関心を持つようになったのですが、太郎の写真は、
独特のインパクトを感じます。本来このような美的感覚を持つ太郎
ならば、おそらく美しく心地よい絵も描くことはできたでしょう。
さすがの彼も、写真には上の3原則を適用することは考えが及ば
なかったようです。

やはり、太郎の才能は本物であった可能性が高く、ドキュメンタリ
ーが明らかにしたように、敏子が太郎の才能をどんどん引き出し、
社会に広めていったことも間違いないことだと思います。
(続く)


<本日の絵>
Daler & Rowney アクアファイン 254X178mm ジャズプロムナードイン仙台での演奏
ジャズプロムナードインセンダイ165
ビッグバンド用の仙台市庁前の大広場会場から、定禅寺通り沿いの円形劇場
に移動して、女性のピアニストが率いるトリオの演奏をスケッチしました。
昨年も、マイブックスケッチを行った場所です。今回は彩色可能な、B5版の
水彩紙に変えました。

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太郎と敏子 ~瀬戸内寂聴が語る究極の愛~(1)

土曜日、昼食のために仙台ショッピングモールにで
かけ、自宅に戻ってテレビをつけたところ、NHKのス
ペシャル番組「太郎と敏子 ~瀬戸内寂聴が語る究極
の愛~
」が開始されたところでした。
(東京では、昨夜放映されたようです)

ただならぬ導入部に引き込まれ、1時間近い番組を一
気に見てしまいました。

岡本敏子という名前を知ったのは、ほぼ6-7年前、
現在、渋谷駅から井の頭線の渋谷駅を結ぶコンコー
スに掲げられている「明日の神話」を、メキシコで
見つけて日本に持ち帰ったドキュメント番組を見た時
です。

その時に、彼女が岡本太郎の秘書で、実質的な妻で
あったこと、その後なぜか養女になったことを知りまし
たが、当時、それほど深く考えることはありませんでし
た。

今回は、新たに見つかった敏子の資料に基づいて作ら
れたドキュメントですが、昔はキレイゴトで済ましてい
NHKの番組作りとは異なり、男女の仲、特に女性の生
き方の本質に、大胆にせまる内容だったと思います。
(昨年日曜美術館で放映された、相馬黒光と荻原碌山
との関係も、かなり踏み込んでいるのに驚きました。
もっとも単に自分が時代遅れのせいかもしれません)

線スケッチを始めて以来、絵画や芸術にかかわった女
性に、なぜか関心を持つようになりました。

相馬黒光の記事の自伝でもそうでしたが、娘時代から、
亡くなるまでの岡本太郎との長い関係の中で、敏子が
変化していく過程がつぶさに描写されています。

現在と違い、結婚も仕事も受け身であった時代、いか
にして自らの道を見出していったのか、「堺廻り」は一
旦中断して、このドキュメンタリーに寄り道してみます。
(続く)


<本日の絵>
マイブック トランペット奏者
ジャズプロムナードインセンダイ164
ジャズプロムナード仙台にて。単独奏者を
描いた2番目のスケッチです。

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